泣き虫っていう虫が本当にいたらどんな虫かしら? てんとう虫みたいに可愛いのかな? 手の平にチョコンと乗って遊ぶのかな? 私の泣き虫はどんな色をしているの? 一度、ちゃんとお目にかかってご挨拶しなくちゃね。泣き虫クン。 私が芸能界入りを決めた時でした。 親とか親戚の人が「佳代ちゃんが歌手になりたいと思ったら頑張ればいいけどさァ。 芸能界って恐い所で先輩にイジメられたり大変なんじゃない?」 「友達なんか出来ないよ。 ライバル意識いっぱいだろうね」 「あなたは泣き虫だから心配だな」 みんなと同じように私もまだ芸能界というものを知らなかったから、もしかして、とっても恐い所なんじゃないかと思ってたのです。 でも絶対に歌手になりたい!と思っている私は不安もあったけれど、自分の未来を夢見て東京へやって来ました。 新人歌手・岡田有希子として、先輩達と一緒にTV番組に出演する機会が沢山あるでしょう。 デビュー直後の事だけど、今思うと本当にバカみたいな事で泣いてしまった事を思い出しちゃった。 一人で泣いてたのです。 TV局の雰囲気は『中学生日記』に出演して慣れてはいるものの最初はドキドキ。 深呼吸して「おはようございます」と元気よく楽屋に入ると先輩歌手の皆さんが「おはようございます」と返してくれます。 少しホッとして部屋を見渡すと、それほど広くもなく私は一体どこに居ていいのか判りません。 ヤダーどうしよう…。 オロオロしているとマネージャーが「有希子ホラ、鏡の前がキミの席だよ」と教えてくれました。 緊張と興奮でボーッと立っていた私はハッと我に返り、マネージャーが指差した場所を見ました。 画用紙のような紙に岡田有希子様と書かれたものが鏡の上に貼り付けられています。 これを見た時「本当に私は歌手になったんだな」と思いました。 嬉しかったですね。 自分の存在を認められているというのかホント嬉しかったの。 ところが楽屋の中では楽しそうな笑い声が響き渡ります。 先輩たち同志でお菓子を交換したりして愉快なお喋りが続いています。 「みんな仲良しなんだ」 羨ましくて輪の中に入って行きたいのにどうしても出来ません。 私ときたら最初に「おはようございます」と言ったきり、ずっと黙ったままです。 どうしょう…、どうしょう…。 自分がこの場に一緒にいる事が悪い様な気になって来るのです。 何て言うのかな…、何か私がこの場に居てはいけないんじゃないかという気になるのです。 人見知りする性格だから、自分から、その中に入って行く事が出来なくて…。 “邪魔になるんじゃないかしら” “何か話をした方がいいんじゃないかしら” 私ったら鏡の前に座ったきり、身動き1つしないで色んな事を考えていたのです。 別に誰にキツい事を言われた訳じゃないのに変ですね。 遠慮というのじゃないと思うのだけど、どうも自分から話すキッカケが上手く作れない。 損な性格だと思われるかも知れないけれど、これが自分なんですよね。 あの時ほど自分の性格の事をしみじみ考えた事は他にありませんでした。 ようやく番組収録が終わって皆さんに「お疲れ様でした」と挨拶して、楽屋を出るとドーッと悲しくなって来てマネージャーの運転する車に入った途端シクシク…シクシク…。 今考えると何であんなに考え込んでたのかな?なんてノンキに笑い話に出来るけれど、あの頃は、もう毎日泣いてたんですよ。 TVやラジオで上手く歌えなかった時やお喋りでドジしちゃった時、無性に泣きたくなるのです。 精一杯やったのに自分の思う様に出来ないともうダメ! 「あんまり泣いてちゃ、皆に変に思われるから」 「自分で選んだ仕事なんだもの少し位辛い事があっても我慢しなければ」 自分に言い聞かせて、必死で泣くのを我慢して、いつもの明るい有希子にならなくてはと思うのですが…。 最近、楽屋では1対1だと平気で皆と話せちゃう様になりました。 何度も会ってお話するうちに気心が知れて来ると何のわだかまりも無く話が出来るの。 時間が掛かるけれど、この人とは仲良くなれると思うと全面的に信頼しちゃうのです。 そういう時の有希子って結構、お喋りさんなのだ。 でも、まだまだ大勢の人達だと迫力負けしてダメですけれどね。 今までTVに出てるのを見てワーッ!カッコイイなァなんて、思ってた人達がズラーッと目の前にいるんだもん…しょうがないよね。 こんな事、書くと岡田有希子は根暗だ!と思われちゃいますね。 でも、でもですね… こうやって、ズーンと落ち込んで行くと最終的には開き直りというか立ち直っちゃうの。 自分でも不思議なんだけど、さっきまであんなに悩んでいたのに「エーイ考えたってしょうがない。 私は私。自分は今これしか出来ない。 もう、やるっきゃないのだ!と結論を出したら悩んでたり、暗〜い気持ちがスッと消え去ってしまうのです。 面白いでしょ。私だって、自分の事ながら呆れちゃう位なんですヨ 同期の新人同志って、急速に仲良くなるものなんですね。 TV局や歌謡祭などで一緒になる機会が多いし、殆どがクラスメートだったりするからね。 みんな面白くて優しい人達ばかり。 仕事で学校へ行けない時など皆で情報交換し合ったりして助け合ってます。 試験前なんて、みんな楽屋で教科書とノート広げて得意の科目を教え合うの。 まるで学校のようよ。 時にはクラスメートの噂話なども。 「あのね、KちゃんA君と交際してるみたいよ」 「ホント!いいなあ!私もBF欲しい」 女の子のお喋りは尽きないのです。 泣いたり笑ったり、落ち込んだり騒いだり。 乙女心は複雑なのですヨ いつもの私は、おっとり屋でほんと動作がのんびりしている女の子。 笑い出すとなかなか止まらなくて、あんまり笑い過ぎてお腹の皮がよじれてしまうんじゃないかと思う位のゲラ子。 考え込んじゃって暗い気分になる事もあるし、明る過ぎてハシャイじゃう時もあるし。 全部ひっくるめて私なのです。 よく取材の時に聞かれます。 「新人同志でライバル意識はあるか?」 私デビューした直後より、現在の方が賞は余り欲しいとは思いません。 友達の中で競争するのはイヤ。 賞を取る事よりキャンペーンやコンサートで私の歌を聞ききに大勢の人が集まってくれた方がずっと嬉しいから。 どんな時でも自分らしさは大切にして行きたいのです。 人間て色んな感情がありますね。 例えば悲しみや苦しみ、楽しさや嬉しさや怒り、そして、いつも怒っている人とか笑っている事が多い人とか色々な人がいるでしょ。 これが性格というものなのかな。 私はきっと…、負けず嫌いで泣き虫で甘えっ子の性格。 17歳の有希子は今精一杯ガンバッてます。 皆もファイトね!! 私も泣き虫さんとは上手に付き合って行けたらいいなあって思ってます。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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