殴り書き
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雨な誕生日



窓を伝う滴[シズク]が
雨が降り出したことを告げる。
雨の日は何故こんなに憂鬱で寂しい気分にならなくてはいけないのだろうか。



以前、学校からの帰り道に自転車を漕ぎながら雨に降られたことがあった。

視界は最悪で、拭っても拭っても額から垂れ、目に入ってくる滴にイライラした。


服はびしょびしょ。
スカートは濡れて足にまとわりつき邪魔だった。

なんでこんな日に限って…


その日は弟の誕生日だった。

帰りに店に取り置きしてもらっていたプレゼントも取りに行った。
きっと私の少ない手持ちからやっとの思いで買ったプレゼントも、びしょびしょのカバンの中で濡れてしまっているだろう。

弟の大好きな、透き通るような青色の紙で綺麗に包装されたプレゼントが、ぐしゃぐしゃになっている。


弟は落胆してしまうだろうか。


年の離れた弟の泣き顔が思い浮かび、私はできるだけカバンやカバンの中身を濡らさないよう、体を盾にしながら自転車を漕いだ。


家に着いた時、私のカバンは気をつけていたにも関わらず完全に水没していた。
私は自分にまとわりつく滴を拭くのも忘れてカバンの中身を覗き込んだ。


…中身は予想通り綺麗な包装は跡形もなく、ぐしゃぐしゃだった。


私は何とかならないかと母に言ったが、母は無理だと首を振り私をお風呂場へ投げ込んだ。


私は無性に悔しくて堪らなかった。

自分の運の悪さを呪った。









…お風呂から出た私を待ち構えていたのは、幼い弟の泣き顔ではなく、



弟の満面の笑みだった。


『お姉ちゃんありがとう!!
これスッゴく大事にするからね!!』

『ああ、お誕生日おめでとう。』


弟は濡れて破れた包装紙を綺麗に開いて、中身のオモチャを私に見えるように自分の身長より高々と上げていた。


『姉ちゃんもお誕生日おめでとう!!』



『…こっちこそありがとう。』


喜んだお前の顔が姉ちゃんへの一番のプレゼントだよ。


私と弟は同じ日に産まれた。


間に長い月日の違いはあったけれど、私はこの世で一番かけがえのないプレゼントを貰えた。
それはお前の誕生日。

私とお前の誕生日。


一生消えることのない繋がりが、この日に溢れている。











思い出して雨の日も悪くないと思った。

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