小説
悠麻さんよりコラボ謙かす!
1/2ページ目
「よぉ、謙信!」

いつものように奴…いや、前田慶次はふらりと現れた。

「おお、けいじ。ひさしいですね」

我が主は前田慶次を招き入れた。
ああ、なんてお美しいお声…。
縁側でお茶をお飲みになっていた謙信様の横に前田慶次が腰かける。
そんな近くに寄るな、寄るんじゃない!

「謙信、かすがちゃん。
 今日はお土産を持ってきたぜ」

そう言うと、前田慶次は大きくて丸い物体を謙信様へ手渡した。
謙信様が包みを開けると、中には大きなスイカが。

「夏だし、やっぱスイカだよな」

私は、謙信様が手に持たれているスイカを受け取る。
謙信様は、私にスイカを切ってくるようにお命じになられた。
その時、前田慶次が待ったをかけた。

「謙信、スイカ割りしようぜ」

「はぁ?」

私は思わず本音が漏れてしまった。

「前田慶次!謙信様にスイカ割りをさせようなんて…」

私が前田慶次を制止しようとしたその時、謙信様が口を開かれた。

「よいではありませんか。
 かすが、わたくしは“すいかわり”をしたことがありません。
 “すいかわり”をしようではありませんか」

ああ、謙信様がスイカ割り?!
前田慶次、スイカ割りがどのような物か分かって言っているのか?
スイカ割りというのは、地面に置かれたスイカを目隠しをして叩き割る…というもの。
いくらなんでも、主にそのようなことはさせられない。

「謙信様、本当にスイカ割りを…?」

恐る恐る聞いてみる。
いちおう…。

「ええ、もちろんです」



謙信様は本気であられた。

やろうぜ、と前田慶次はスイカを持つと庭の一画にスイカを置いた。
おい、待て勝手に進めるでない。
それに、スイカをそのまま地面に置くとはどういうことだ。
割ったスイカは食べるのだぞ。
謙信様のお口に入れる物を地面に置くなど考えられない。

「前田慶次、とりあえずスイカの下に敷く物を持ってくるから待っていろ」

私はそう言って、スイカ割りをするための道具を取りに部屋の奥へ入って行った。



必要な道具を庭に準備する。
謙信様は、相変わらずお美しいほほ笑みを浮かべられたまま、スイカ割りの準備を進める私と前田慶次を見守っておられた。

こんなに美しい主にスイカ割りをさせるなんて…。
眩暈がしそうだ。

「よーし、謙信。準備できたぜ。
 スイカ割りのルールは知っているか?」

前田慶次がスイカ割り用の棒を持ったまま、謙信様に問い掛ける。
なんて失礼な質問だ。
謙信様に知らないことなどあるはずがない。
いや、でもスイカ割りを知っていて、やったことがある…と言われる方が困るが。

「もちろんです。
 めかくしをして、おかれたすいかを きればよいのでしょう?」

「ああ、じゃあ謙信やってみる?」

「ええ」

ああ、何ということだ。
前田慶次が謙信様に目隠し用の手ぬぐいを縛り付けている。
今すぐにでも、切ってやりたい…スイカではなく、謙信様に失礼なことをする前田慶次を…。

「けいじ、あぶないからさがっていなさい」

「へ?」

前田慶次が、謙信様に目隠しをして、スイカを叩くための棒を渡そうとした時、謙信様は腰に携えた刀に手を掛けていた。
何やら危なそうな予感がしたため、前田慶次はそのまま後ろへと下がった。

「では、いきますよ…」

謙信様は目隠しをしたまま、神経を集中されている。
そして、スイカの気配を感じ取ると、掛声と共に刀を鞘から抜き、そのままスイカ目掛けて刀を振り下ろした。

謙信様の剣が舞う音が聞こえた瞬間、スイカは真っ二つに切り裂かれていた。
見事…としか言えないほど、スイカを美しく二つに切り裂かれていた。
真っ赤な果肉から、スイカの汁が滴り落ちる。
きっと、このスイカはとても甘くておいしいだろう。
さすが、前田慶次。
選んでくるものも一流だな。

なんて、ひと通り感心してしまったのだが、これはスイカ割りというか…。
私が謙信様になんとお声を掛けようか迷っている間に、前田慶次が謙信様に声を掛けいていた。


「謙信、さすがだなー。
 すげー剣の腕前!ってのは分かるんだけど、スイカ割りとはちょっと違うような…」

「めかくしをして、すいかをきる…のではなかったのですか?」

謙信様は、目隠し用の手ぬぐいを外しながら前田慶次に話しかけた。

「スイカ割りってのはなぁ…」

前田慶次がスイカ割りの説明を暑苦しく始めたので、ここは飛ばしておこう。

私は謙信様がお美しく切られたスイカをさらに食べやすいように包丁で切った。
そして、皿に乗せ、縁側に置いた。

「謙信様、食べやすい大きさにお切り致しましたので…」

「ありがとう、かすが」

いえいえ、礼を言われるようなことなど何もしてはおりません!
ああ、謙信様…。
そのお言葉、かすがは本当に嬉しく思います。

「前田慶次も一緒に食べていけ」

「いや、俺はそろそろ帰るよ。
 たまには帰らないと、まつねーちゃんに怒られっからさ」


そう言うと、前田慶次はスイカを一切れ掴み、夢吉に与えるとそのまま手を振って帰って行った。
前田家の風来坊は何を考えているのだか、やっぱりよく分からない。


「かすが、おまえもこちらでたべなさい」

謙信様に呼んでいただけるなんて―――!
かすがは本当に幸せでございます。

謙信様の隣に腰を掛ける。
すると、謙信様はご自分が食べられていたスイカの乗った皿を私の膝の上に置かれた。
私は、謙信様に勧められるままスイカを一切れ手に取り、口に運んだ。
みずみずしくて甘い。
おいしい。

「謙信様、とてもおいしゅうございます」

「そうですね、とてもおいしい。
 もうひとつ、いただきましょう…」

謙信様がもう一つ、とおっしゃったので、私は右手に食べかけのスイカを持ったまま、膝の上に置かれた皿を差し出そうとした。

その時。

謙信様は、私の右手を掴み、にっこりとほほ笑まれた。
謙信様!!!!
そんなことをされては、かすがはスイカを食べるどころではありません!
そして、何を思われたのか、私が右手に持つ食べかけのスイカを食べられたのだ!

「ほんとうに、このすいかはおいしいですね」



―――ああ、謙信様。
正直に申しますと、せっかく前田慶次が持ってきたスイカの味をすっかり忘れてしまいました。
謙信様の手の温もりと、吐息と、食べかけのスイカがあったことしか覚えておりません。

かすがは幸せでございます。



End

[指定ページを開く]

次n→ 

<<重要なお知らせ>>

@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
@peps!・Chip!!は、2024年5月末をもってサービスを終了させていただきます。
詳しくは
@peps!サービス終了のお知らせ
Chip!!サービス終了のお知らせ
をご確認ください。



w友達に教えるw
[ホムペ作成][新着記事]
[編集]
無料ホームページ作成は@peps!
無料ホムペ素材も超充実ァ