小説
悠麻さんより相互記念謙かす!
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「謙信様、お茶を…」
「ありがとう、かすが」

甲斐の虎の忠告通り、私は謙信様の側を離れずに、常に謙信様をお守り続けた。
猿飛佐助に言われた通りにしていることは、少し癪ではあったが、甲斐の虎の忠告とあれば無視するわけにもいかない。

上杉謙信の庵は、第六天魔王 織田信長の恐怖すら忘れてしまいそうなくらい静かな時を刻んでいた。


「わたしのうつくしきつるぎ、もっとそばへ…」
お茶を差し出すと、そっと謙信の傍らから離れたかすが。
謙信は出されたお茶を一口飲むと、かすがに声を掛けた。
「どうかしたのですか?」
「………」
何も言わずに、頬を赤く染めたまま俯くかすが。

謙信様のお傍へ参りたい、でもそれは忍としてではなく…。


かすがの考えていることは謙信の予想の範囲内であろう。
謙信は優しく微笑むと、そっと立ち上がりかすがの前に座った。
そして、俯くかすがの髪を右手で優しく撫でた。
そのまま俯く顔を無理やり持ち上げる。
謙信とかすがの視線がぶつかり合う。

かすがの頬はさらに赤みを増していた。
その美しい瞳は驚きと喜びの気持ちをを訴えていた。

「かすが…」
「け、謙信様…いかがなされましたか…?」
視線を逸らしたくても、謙信の右手が自分の頭を、左手が自分の左肩をしっかりと押さえており、動くことはおろか、視線を逸らすことすらできない。

「そなたが かたわらにおれば、いずこであろうとも わたくしのやすらぎのばしょです」
謙信は、日頃の感謝の気持ちをかすがに伝えたかった。
常に自分の側で自分を守り続け、自分の手足となって情報を集め、自分の盾となって戦ってくれる…。

かすがは、謙信のためなら命すら惜しくないと思っていた。
もちろん、謙信もそのことには気づいていた。

本来であれば、自分が守ってあげたい。
自分が盾となって守ってあげたい。

それでも、お前はわたくしの気持ちに気付かない。
すこしだけ意地悪をしてみたくなる。


「謙信様、ありがたきお言葉…。
かすがは嬉しゅうございます」
かすがは感謝の意を伝える。
しかし、それは謙信に仕える忍としての回答で…。
謙信が本当に欲しい回答とは違っていて。

謙信に何を言われても、自分の本当の心を隠そうと、自分の任務に徹しようとする。
その姿が可愛らしくて、可愛らしくて。
謙信は抱きしめたいと思う気持ちをぐっと我慢する。

謙信はかすがの右側の耳元へ唇を近づける。
左肩を押さえていた自分の左手で、かすがの両手首を掴む。
さらに抵抗できないように…。
そして、耳元で囁く。

「かすが、あいしていますよ。
 このことばのいみ、りかいしていただけますか?」


ああ、謙信様!!!!!
叫びだしたい気持ちを我慢してかすがは謙信の言葉に、吐息に酔いしれる。
謙信様が、私を愛している?!
そんな、まさか…。

かすがが一人で自問自答している姿でさえも可愛らしくて、可愛らしくて。
謙信は、再度耳元で囁く。
「わたくしのきもち、わかりましたか?」
「あ…はい、謙信様…」
「それでは、かすがのわたくしへのおもいを、おしえていただけますか?」


謙信様、宜しいのでしょうか?
私は忍。
本来であれば、女として主を愛するなどあってはならないこと。
それでも、今だけは…今だけは私の気持ちを貴方様へお伝えしても宜しいのでしょうか?

それでもまだ何も言わないかすがに、謙信はさらに耳元で囁く。
「かすが、よいのです。
 そなたのほんとうのこころをきかせなさい」

「しかし、謙信様…。
私のような者が謙信様をお慕い申し上げるなどあってはならぬこと」


もう、貴女の気持ちなどすべて分かっているのに、と謙信はそっと溜息を吐いた。
その溜息がかすがの耳元をくすぐる。
「ああ、謙信様…。
 ほ、本当に宜しいのでしょうか?」
「そなたはわたくしに うそをつくつもりですか?」
「いえ、そのようなつもりは…ただ…」

かすがは硬直したまま、謙信の瞳を見つめていた。
切れ長の美しい瞳。
私はこの瞳に見つめられると逆らうことが出来なくなる。
いや、何もできなくなる。
私の体すべてが貴方様の視線を感じたいと、動けなくなるのだ。
かすがは覚悟を決めることにした。
そう、謙信様に求められるのなら、私に拒否する権利はない。


「か、かすがは謙信様をお慕い申し上げております。
 その…いつまでも謙信様のお傍においていただきたいと願っております」

謙信はずっと待っていた。
抱きしめたいのも我慢して、ずっと。


そのまま抱きしめようとも思ったが、別のことでかすがに自分の気持ちを伝えることにした。
耳元に近付けていた顔をかすがの顔の前に戻すと、そのままかすがの柔らかな唇に自分の唇を重ねた。

驚きはしたが、謙信の想いを感じると、かすがはそのままそっと目を閉じた。
かすがが目を閉じたことを確認すると、謙信は両腕で優しくかすがを抱きしめた。
かすがも謙信の腕の温もりと優しさを感じると、そっと自分の腕を謙信の体に巻きつけた。



「かすが…いつまでもわたくしとともに」



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